いろんな事に当てはまる事ではありますが当たり前の事に対して「なぜ?」と掘り下げる事って大切だと思うんです。ここ数ヶ月、櫓(やぐら)のお問い合わせが急に増えてきました。そんな中でふと「そういえば、なぜ提灯って櫓の周りにつけるのかな?」と思い、これが本日の記事を書くきっかけになりました。
特にイベント業に携わっていない人でも、夏場に公園や小学校のグラウンドで盆踊りをしているのを見かけると「楽しそう」「音頭にあわせて練習とかするのかな」「花火大会とかもあるのかな」「夜店ではどんなもの売ってるのかな」といったことを想像したり調べたりする事はあると思います。
一方、私たちは全国中のイベントをトータルで支えるプロフェッショナルとして、扱うアイテムが何を実現する為に準備されたものなのかを深いレベルで落とし込んでいかないと、本当に優れたやサービスを提供することは出来ません。そして学んだからにはアウトプットをする場も必要なのです。
前置きが長くなりました。それではまず盆踊りがなぜ行われるのか?からお話していきます。
盆踊りはこういう理由で行われている!
盆休みはご先祖様の霊が帰ってきている時期
盆踊りといえば盆休みという言葉があります。
現代人はこのお休みの間に先祖の墓参りをしたり実家に帰ったりお祭りに参加したりする訳ですが、これは夏場に先祖を供養する為に奉公人に与えられた休暇であり、この風習は奈良時代にはすでにあったとされています。
この期間は先祖の霊が私たちの世界に帰ってきているので、お陰様で無事日常生活を送れていることの感謝を墓前や仏壇の前で伝えたりお供え物を用意しておもてなします。
時代の移り変わりとともに変化する盆踊り
上記の盆休みと盆踊りの本来の目的は近く、お盆に帰ってきた先祖の霊を迎え、そして送る為に行われていたのが盆踊りです。私たちを支えてきた先祖への感謝の想いを馳せながら供養していました。
そして時代が移り変わるにつれ、段々と夏祭りとあわせて行われるようになっていき娯楽・イベントとしての側面が強まっていき、地域の皆様の交流する切っ掛けや夏の思い出づくりの場として親しまれるようになっていきました。
提灯には何が灯る?
さて、ではそんな提灯には何が灯っているのでしょうか?
現在は電気が使われている
現在ではスズラン灯と呼ばれる電球を、折りたたみ式の紙(または薄いプラスチック)で覆い、これを櫓からテントの柱や木や柱などに取り付けて万国旗のように渡しています。
かつては火が使われていた
古くは室町時代に中国から伝来したものだとされており、行灯(あんどん)のように火をつけていました。
※なお、行灯は屋内。提灯は屋外で使用されるもので、前者は火皿や油皿、後者はろうそくを使用していました。
提灯の火にはご先祖様の霊が宿っている。
お盆休みのお墓参りには迎え火・送り火という文化がありました。現在はこれを実際に行うご家庭も少ないと思うのですが、この火の説明をする事で読んで下さっている方が、より深い理解が得られれば・・・と思って少しだけ。
迎え火は、お墓参りの際に蝋燭に火を灯して松明を使って移動し、自宅の軒に吊るして用意していた提灯に灯します。こうすることで、ご先祖様を自宅まで迎えます。
送り火はその逆で、提灯の火をたいまつに移して墓前でお墓の蝋燭に灯し、あの世に再び帰っていきます。
盆踊りで使われる提灯も同じく、先祖の霊が宿っているとされています。そして迎え火・送り火をやぐらに取り付けられた提灯で表現し、会場内を照らす灯で先祖と会話をする為に使用されていたのです。
お盆の由来以外にもこんな目的がある。
ここから先は、上記の仏教行事的な由来以外に提灯を使用する目的について説明します。
目印になる
明るいので、お祭りの開催場所を示す目印として役立ちます。
雰囲気づくりになる
昼間はカラフルで可愛らしい提灯ですが、夜になると暖かく柔らかな光を放ち、祭りの会場をより華やかに彩ります。
安全確保に繋がる
参加者が安全に踊ったり会場を行き来するために、夜間は足元がしっかり見えるよう周辺を明るくする必要があります。
日本の伝統を地域の文化や祭りの歴史が次世代に伝えていく。
盆踊りの様式や価値観は地域や時代によって一定のものではなく、色々と変遷してきました。ただ、提灯を使用して祭りを飾ることが日本の伝統的な祭りの風習の一部として受け継がれてきたという事実には何も変わりなく、次世代にも受け継がれていく事でしょう。
最後に
久々に、長々とした記事としてお届けしました。本日のお話が、これから開催されるお祭りに役立てていただけたら幸いです!